「最近肌が荒れ気味だから、あえて何も塗らないようにしている」
「肌本来の力を取り戻すために、肌断食を始めてみた」
そんな声を耳にする機会が増えてきた。化粧水もクリームも使わず、スキンケアを一切“断つ”という発想は、これまでの「保湿命」な美容の常識とは大きく異なる。
では実際のところ、肌断食は効果があるのか? 肌にとって良いのか?
この疑問に答えるには、肌断食の考え方や目的、メリット・デメリットを丁寧にひも解いていく必要がある。
■ 肌断食とは? その基本的な考え方
肌断食とは、読んで字のごとく「肌へのスキンケアを断つこと」。
目的は、スキンケアに頼りすぎてしまった肌をリセットし、本来持つ自己再生力や保湿力を取り戻すことにある。
本格的な肌断食では、洗顔も水だけ、スキンケアは一切なしというストイックな方法をとることもある。一方で、ゆるやかな肌断食として、化粧水だけにする・夜だけスキンケアを休む・週末だけノースキンケアで過ごす、といった方法もある。
■ 肌断食に期待される効果
肌断食が注目されているのは、次のような効果を感じる人がいるからだ。
・肌本来の保湿力を取り戻す
スキンケアを続けることで、肌が“外から与えられるもの”に慣れてしまい、自力でうるおいを保つ力が低下するともいわれている。肌断食によって一時的に負担をなくし、肌のターンオーバーを整え、本来のバリア機能を活性化することが期待される。
・毛穴詰まり・吹き出物の改善
「スキンケアをやめたらニキビが減った」という人も少なくない。これは、油分の多いアイテムによる毛穴の詰まりや化粧品の刺激がなくなったためと考えられる。
・肌トラブルの原因を見極めやすくなる
複数のアイテムを使っていると、「どれが肌に合っていないのか分からない」ということがある。肌断食を行うと、スキンケアを一度ゼロにすることで肌の状態を“フラット”にでき、必要な成分が見えてくる。
■ ただし…肌断食は誰にでも合うわけではない
肌断食には効果を感じる人がいる一方で、肌の乾燥や不調が悪化したという声もある。
それはなぜなのか?
◎ バリア機能が極端に落ちている肌には負担
すでに乾燥がひどい・敏感になっている肌は、自力でうるおいを保つことが難しい状態。そこに何も塗らず放置することで、肌はますます乾き、バリアが壊れてしまう可能性がある。
◎ 外気や紫外線、摩擦にさらされるリスク
日常生活では空気の乾燥、ホコリ、紫外線、マスクの摩擦など、肌を刺激する要因がたくさんある。スキンケアによる保護を完全になくすことで、肌が“むき出し”の状態になり、外的ダメージを受けやすくなる。
■ 肌断食が向いている人・向いていない人
◎ 肌断食が向いているのは…
- スキンケアのしすぎで肌荒れしていると感じる人
- 油分多めのケアで毛穴詰まりが気になる人
- 比較的健康な肌で、自己回復力を試したい人
- 一度スキンケアをリセットして、合う化粧品を探したい人
△ 肌断食が不向きなのは…
- 極度の乾燥肌・敏感肌の人
- アトピー性皮膚炎や慢性的な皮膚疾患がある人
- すでにバリア機能が崩れていて、刺激に弱い状態の肌
- 日中屋外にいることが多く、外的ダメージを受けやすい人
■ やってみるなら「ゆる肌断食」がおすすめ
いきなり「今日から何も塗らない!」と極端に始めるのではなく、まずはゆるやかな肌断食からスタートしてみよう。
たとえば…
- 夜だけスキンケアを休む(朝は保湿+日焼け止め)
- 週末だけノースキンケアで過ごす
- 化粧水+最低限の保湿剤だけにする
このように段階的にスキンケアを引き算していくことで、肌の変化を観察しながら無理なく続けることができる。
■ まとめ:肌断食は“リセット”のひとつの手段。合うかどうかは肌次第
肌断食は、あくまでも**「肌のリセット法」のひとつ**。
必ずしも万人に効果があるわけではないし、やり方次第では逆効果にもなり得る。
だからこそ、自分の肌と対話しながら、「足すケア」も「引くケア」もバランスよく見直していくことが大切。
肌断食がうまくいくかどうかは、**“肌の今”を見極める目と、柔軟なケアの選択”**にかかっている。
もし最近、「何を塗っても肌が整わない」と感じているなら、少しだけケアをお休みしてみるのも一案。
肌本来の声に耳を傾ける時間を、スキンケアの一部として取り入れてみてはいかがだろうか。